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 世界遺産:武当山  (10.06.23)






所在地湖北省

 昔の人は、何年も生き続けている神通力を持つ老人のことを「仙人」と呼びました。中国最古の字典「説文解字」によると、仙人の「仙」の字は「人が山の上にいる様子」をあらわしています。このため、昔の人の考えでは仙人と山は切り離せないものでした。「天下第一の仙山」と呼ばれる山、それが武当山です。

 静かな環境と霧や雲に包まれ朦朧とした風景、これは仙山としての第一条件です。武当山は湖北省丹江口市の西郊に位置し、亜熱帯の湿潤性気候に属しています。遠くから武当山を見ると、空に霧や雲がたなびいて山の姿が見え隠れし、まさに仙境のような眺めです。仙山としての第二条件は、漢方薬素材の豊富さです。なぜなら、普通の人が仙人のように長寿を得たいと思った場合、漢方薬の服用が必須条件となるからです。武当山には「本草綱目」に収められている薬草1,800種類のうち、400種類が自生しています。

 武当山の山上にはそう遠くない距離を置いて2つの「真武神廟」があります。うち一つは伝説上の真武大帝が天上に建てたものに基づき、「天乙真慶宮」と呼ばれています。南向きの本殿は岩壁にはまりこむ形で、地面からの距離が1,000メートルもあります。周辺には古木が多く、霧でかすんだ風景はまさに仙人が住むところといった様子です。武当山は険しく、こういった山に腰掛ける形の廟さえも作り上げるのは困難ですが、山頂部にはさらにもう一つ、「真武廟」という面積160平方メートルの宮殿がそびえ立っています。真武廟は金殿とも呼ばれ、北京の故宮を模して作られたもので、材料は全て純銅と純金で出来ていることでも有名です。山頂の気温の変化は大きく、金属に膨張や収縮が起こるものですが、金殿を見ると精巧につなぎ合わされてその痕跡も見えず、昔の人がどのように作り上げたのか今は知る方法もありません。金殿をさらに保護するため、明の永楽帝は1419年、北京の居城である「紫禁城」を模した宮殿として金殿の下に「紫金城」を作るよう命を出しました。紫金城は北京と同じように東西南北に4つの門がありますが、南天門だけが通れるようになっています。南天門にはさらに3つの門があり、その真ん中に位置するのが「神門」で、皇族だけが通行できるものでした。武当山にある建築物はどれも、皇権と神権の統一を示しています。

 武当山は道教の聖地です。山中にある絵画や塑像はほぼすべてが道教の伝説に登場する神や仙人ですが、実在の人物として祀られている人が1人だけいます。それが武当山武術の創始者・張三豊です。張三豊は武当山で修行し、太極拳を編み出しました。歴史書によると張三豊が修行をしていたある日、山上でカササギと蛇の決闘を目撃し、蛇の柔らかく落ち着いた動きから武当内家拳を編み出したといいます。少林寺拳法と同じく、武当武術も宗教的な環境の中で発展してきた実戦タイプの武術です。武当山の道士たちにとって、武術は精神修練の手段になっていたのです。

 武当山の周囲は800里、72の峰と24の渓流があります。また、明朝を挟んで約200年の時間を費やし、1万棟にも及ぶ建築物が建てられました。これらは全て絶壁にはまりこむ形で、山や峰と一体になっています。天と人が結び合わされる道教の思想によって、仙境を作り上げているのです。

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