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張揚監督「胡同のひまわり」、胡同と四合院の奥に埋もれた記憶
2006年5月31日(水)

1967年生まれの映画監督・張揚氏は、文化大革命時代の最末期世代にあたる。この世代は幼稚園などの存在も知らず、知っているのは日本の「自治体」を彷彿とさせる組織とその名称「向陽院」だけである。あの時代の生活を覚えている人にとって、張監督の最新作「向日葵(胡同のひまわり)」は当時の記憶をよみがえらせるものである。あの時代の子供の父親世代にとっては、苦しみや悲しみを思い起こさせるが、映画監督“第6世代”にあたる張監督にとっては精神のより所とも言える時代である。
張監督は9年前の映画「愛情麻辣燙(スパイシー・ラブ・スープ)」で現代の中国を描いたが、今回の「胡同のひまわり」では、不惑を前にかつての姿を振り返っている。この映画は張監督の自伝的作品とも言われているが、監督本人はこれを否定しており、「これは人の感情に関わる作品。感情とは全人類に共通するものだから、スペインではサンセバスチャン映画祭で最優秀監督賞を受賞したし、今度は日本でも上映することになったのだと思う」、と述べている。また張監督は日本の観客に対し、“紹介文をあまりたくさん読まなくても、見れば分かるし、気持ちが伝わるはず”としている。
 4月25日、張監督は主演で子役の張凡とともに、渋谷で記者のインタビューに応じた。

私たちの30年について

問:この映画は現代中国の30年間が舞台ですが、この間の時代変動は非常に大きかったと思います。どうしてこの時代を選んだのですか?
張:映画は1976年の文革終了直後から始まります。私の父親世代は政治運動などで苦労を強いられ、子供たちの面倒を見る時間が少なかったのです。だからあの時期、私たちは幸せだったと言えるでしょう。一日中自由に遊びまわっていられたから。しかし、親たちのしつけ方法は時に乱暴でした。親たちは、日中は勤め先で不公平な待遇を甘んじて受け、帰宅してからはその沈んだ気分を晴らすかのように私たちをぶったりしました。私たちはだいたいそんな感じであの時代をすごしてきたのです。
 80年代に入ってから、中国は大きく変わりました。長く閉鎖されていた中に、外から文化や思想がどっと流れ込んで来たので、私たち若い世代は大きく影響されました。欧米の文化や流行、ロック、ブーツカットパンツ、ロングヘアなどなどに圧倒されたのです。私は、あの頃から父親世代と子供は激しくぶつかるようになったのだと思います。学校は私たちのロングヘアやパンツを容赦なく切り捨て、私たちはそれでもかたくなに反抗しました。
 90年代末には経済も大きく発展し、都市部の生活レベルは先進国に接近してきました。70年代、私たちの父親世代は精神的な信仰を追求していましたが、90年代は金銭が人の価値を量る基準になってきました。父親世代は気まずいような感情の中で信仰心も消えうせ、困惑しています。晩年に向かって金銭面の困惑だけでなく、彼らが一生かかって稼いだ金額を若い世代が1年で稼いでしまうことを、辛いものと思っています。
わたしは1976年、1987年、1999年という3つの観点から、この30年に起こった変化を描いてみました。

自伝ではないが、自分の生活を反映

問:この映画は自伝的な作品ですか?
張:映画では私の視点で時代の変化を描いています。でも決して自伝ではありません。映画の主人公は画家ですが私は違うし、私の父も画家ではありません。でも、多くの部分で私が日常生活で体験してきたものを反映しています。私が幼い頃に住んでいた四合院は西太后付きの宦官たちが暮らした場所で、70年代には狭い中に70人以上もの人が住んでいました。貴重な文化遺産の破壊行為にあたりますが、当時の私たちにはたくさんの幸せを与えてくれたのです。99年に四合院は取り壊され、胡同もなくなりました。いま両親は高層アパートに住んで便利になりましたが、多くのものを失ってしまいました。

最も遺憾な事は「四合院と胡同の消失」

問:四合院と胡同の破壊が話題にのぼりましたが、都市開発についてどう思いますか?
張:四合院と胡同の消失は最も遺憾な事です。以前は貴重な文化遺産が完全な形で残された街でしたが、その後はどんどん都市化が進みました。中国の都市開発は盲目的で、“現代的”とは高層ビルのことだと思われていました。最近になって、やっとその考えは違うと考えられ始めましたが、幼い頃から四合院と胡同の中で育った人にとっては、もうすでに手遅れなのです。

父子の感情は世界共通

問:この映画が日本で上映されるにあたって、日本の観客に時代背景を説明する必要があると思いますか?
答:必要だとは思いません。観客はみんなが背景を分かっているわけではありませんが、こういう映画は日本の観客にもその背景がなんとなく感じられると思います。全く背景を理解していなくても、父と子の関係は世界共通で、感情も同じく共通だと思います。親子の30年にわたる確執はみんなが共感するだろうし、色々な経験をしてきた人には尚更です。日本の皆さんがこの映画を気に入ってくれるよう、心から願っています。

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